12月 7, 2020

『感染者数ではなく、脆弱性に焦点を合わせる』に関するレポート

作成者:Ritter Diaz、ビジネスコンサルタント
東京、2020 年 7 月 22 日

 

今年の 5 月 21 日、ブログに『経済、社会活動の再開:コロナウイルス COVID-19 の抑制 状況』という記事を書きました。その中で、私は公衆衛生の専門家ではありませんが、家族 や友人の幸福を祈る善良な一市民として、人々の生活や社会活動を長期的かつ広域にわた って制限することなく、コロナウイルスの大流行を終息させるための合理的な解決策を模 索し続けていると述べました。

パナマ政府は、感染拡大の初期段階だった 3 月の第 2 週目に、他国にならってロックダウ ンを発令しました。パナマ政府がとったこの決断は、油断のならないこのウイルスへの対応 策としては当然の措置だったと言えます。

その時点で、新たに発見されたこのコロナウイルス(以下 Covid-19)は、当時すでに認識さ れていたコロナウイルスグループに属するウイルス性呼吸器疾患であることが、すでに世 界的な常識となっていました。この背景については、2003 年に香港で検出された SARS- CoV-I と、2012 年にサウジアラビアで発見された同グループに属する MERS-CoV が挙げ られます。これらは全てウイルス性呼吸器疾患であるため、人から人へと容易に感染します。 一般的な風邪やインフルエンザで起こるのと同じように、ウイルス保有者の咳や、会話で発 生する飛沫から感染することが分かっています。

統計によると、Covid-19 は他の呼吸器疾患と比べて人体内での潜伏期間が長いため、この 特徴も伝播力を高める要因となっています。しかし、世界保健機関と世界各国の政府による と、感染した人々のうち 80%は軽度の症状または無症状であり、15%は酸素吸引を必要と する深刻な症状で、残りの 5%は人工呼吸器を必要とするような命に係わる症状がでる ことが報告されています。

Covid-19 のもう 1 つの特筆すべき特徴は、年齢を問わず、持病を持つ人々に感染した際の 攻撃性の高さです。事実、高齢者については基礎疾患や老化により、あるいは若者であって も肥満、糖尿病、心臓病、高血圧、癌、免疫不全などの持病がある人は、Covid-19 に感染 すると死亡するリスクが非常に高くなる傾向があります。Covid-19 感染者は現在、世界中 の病院にある集中治療室の大部分を占領し、その圧倒的な感染者数の多さは保険当局を脅 かすだけでなく、治療を必要とする人々のために必要なベッドや機器類の十分な確保が難 しい状況を生み出しています。

感染の拡大がパナマに到達したとき、パナマ保健当局は 3 月 13 日に緊急事態を宣言し、 その後、完全なロックダウンを命じ、広域にわたって人々の生活や社会活動が制限されまし た。もちろんこれは、パナマ国民の健康を守り、国内の感染拡大を早急に抑制することを 目的としたものでした。しかし、制限措置が実施されてから約 4 か月が過ぎましたが、

5 月末以降、感染者数は徐々に増加し、7 月には最高レベルに達しました。

この状況は、政府がこれまでにとってきた戦略を見直し、現在までに分かっている事実に 基づいた今後の行動方針を再構築するきっかけとなりました。この点に関して、私はいくつ かの提案を行いたいと思います。それはウイルスの蔓延を封じ込めるだけでなく、経済再開 の時期を明確に打ち出す為にも役立つと私は信じています。

まず、Covid-19 感染者の中で、症状が軽い人については自宅ではなくホテルに待機させる ことをお勧めします。家庭内に留まることで、人々の行動を制御することが困難になり、感 染のレベルが高まります。私たちパナマ人は根っからのラテン気質ですから、家で大人しく 療養するという感覚はありません。特に、症状が軽い場合はなおさらです。さらに、Covid- 19 は、私たちの社会に浸透してしまっている社会経済的な格差を露呈させました。ガイド ラインや自宅隔離などに従わない特定の市民の行動によって、その背景にある貧弱な教育 レベルが明らかとなったためです。また、ホテルに人々を待機させることは、パンデミック で大打撃をうけたホテル業界の収入を押し上げることにも一役買うでしょう。

第二に、Covid-19 がコントロール可能なレベルに達するまで、特に基礎疾患を持つ人々は 外出を自粛するように、全国的なメディアキャンペーンを行う事をお勧めします。メディア キャンペーンを行うことで、職場、学校、スタジアム、ジム、映画館、劇場、その他公共の 場において、市民はマスクを着用し、前述したように特に注意が必要な(リスクの高い)人々 の周辺では社会的距離を保つように、国民の意識を高める必要があります。

第三に、感染した人々の治療や現行の医療体制を支援するために、この全国的な取り組みに 民間のクリニックを含めることを推奨し、さらに多くの医療従事者を雇うこと、コンベンシ ョンセンター等に追加の医療施設を設置することをお勧めします。すでにいくつかの国で は、テントや様々な施設に医療設備を設置し、医療システムの崩壊が起きることを防いでき ました。

第 4 に、軽い症状(疲労、喉の痛み、軽い咳や発熱など)が現れた時点で、早期に医療機関で の受診を促すようなメディアキャンペーンを行うことが重要です。特にパナマにおいては、 これから梅雨が始まりますが、例年この時期には風邪が流行することもあり、十分な注意が 必要です。

第 5 に、感染レベルが高い地域(パナマの場合、チョレラ、アライジャン、サンミゲリート) や、新たに多くの感染が発生している場所に重点をおいて PCR 検査を行うことにより、 感染の経路を追跡し、感染拡大を抑制することが大切であると考えます。現時点で、パナマ 国中の感染レベルは非常に高いと言わざるをえません。これは、家での待機を余儀なくされ ている感染者や、ガイドラインに従わない無責任な行動をとる人々が要因となっています。

第6に、無症状の人々を検出し、人口における免疫を持つ人の割合を可視化する為に、抗体 テスト(Rapid Diagnostics Test-RDT、米国連邦医薬品局によって承認されている)を各首 都で実施することを推奨します。これらのテストは、偽陽性や偽陰性を回避するために、可 能な限り精度の高いもの(90%以上の正確率)を使用しなければなりません。この種のテスト は PCR テストを補完するものとして機能し、国内の感染経路を監視するのに役立ちます。

国が経済活動を再開する際には、政府は企業および各機関がスタッフに抗体検査(RDT) を実施することを許可するべきです。パナマ運河庁は間もなく、すべての従業員にこれらの テストを実施する予定です。

ここまでの提案は、政府が早期に経済活動を再開することを可能にします。我々が焦点を当 てるべき項目は、日々の新規感染者数の推移ではなく、退院者数や集中治療室・病床の状況 を把握することで、今後の死亡者数を可能なかぎり減らしていくことです。

要するに、もし政府が感染リスクの高い脆弱な人々(高齢者、持病を持つ人々)の保護に注力 すれば、毎日の新規感染者数について心配する必要はもはやなくなるでしょう。すでに私た ち国民は何が起きようとしているか理解しています。そして、私がすでに持病持ちの親戚に 注意を払ってきたように、各個人がお互いに、自分の愛する人たちを守るために行動するこ とが大切なのです。

ロックダウンのような制限措置を 3 ヵ月以上行っても良い結果をもたらさなかった場合、 それ以上同じような政策を続けることは、国の経済破綻を引き起こすだけでなく、誰も望ま ない、暴力にあふれた政治的不安定な社会を作る原因となるでしょう。

保険当局や専門家たちは、国民の健康を守るために、彼らに出来うる最大の努力を惜しむこ となく、これまで素晴らしい仕事をしてきました。しかし、現状は経済活動の再開・保護が 必要とされ、そしてそのためには、強いリーダーシップが求められています。米国の政治ア ナリスト、ザカリア・ファリードが述べたように、戦争は将軍だけに任せるべきではない、 非常にデリケートな問題なのです。(リーダーに任せっきりになるのではなく、各エリアの 専門家たちが集まって多角的に問題を検証することで、様々な方向からのアプローチが問 題解決の為には重要であるという意味)

ウィズ・コロナ(Covid-19 との共生)という風潮が広まる中で、世界的大流行を終息させ、 経済活動を正常化させるために、国のリーダーたちは新たな原動力を示さなくてはなりま せん。

多くの国がすでに経済を活性化させている一方で、その影響をうけ、今も様々な場所で新規 感染が発生しています。それは私が住んでいる日本も例外ではありません。 しかし、今こ そ日常を取り戻し、コロナウイルスとの共存を念頭に、感染リスクの高い人々の保護を最優 先に考えていくべきではないでしょうか。

 

訳:畑田紋奈